
音に駆ける×本荘悠亜 – 職業、ピアノ演奏家
「音に駆ける」をテーマに、クラシック奏者へ過去・現在・未来をお聞きする記事企画。第3弾は12月10日にBIG SHIPランチ&コンサートを控えている本荘悠亜さん。現在富山県にある大学院に在学中。上京されてきたタイミングで、お話しをお伺いすることができました。(写真は本荘さんにご提供いただきました)
本荘悠亜 | 「モダンピアニズム」による豊かな響きでピアノのポテンシャルを引き出し、クラシック音楽の魅力を伝えるピアニスト。知的好奇心をくすぐる軽妙なトークを交えたスタイルのコンサートで好評を博している。滋賀県出身、灘高等学校、東京大学を卒業。音楽の道は考えず、卒業後は企業にて研修・セミナーの運営やマーケティング業務に携わる。素晴らしいピアノ指導者やアーティストとかかわる中で、自身もピアニスト・ピアノ指導者になるという目標を抱き、一念発起し、桐朋学園大学大学院に入学。現在桐朋学園大学院大学ピアノ科修士課程2年。滋賀県ピアノコンクール、大阪国際音楽コンクール、熊谷ひばりピアノコンクールにてすべて第1位(最高位)獲得。下田国際音楽コンクールプロフェッショナル部門第6位、YYA国際ピアノコンクールにて予選を第1位で通過、本選入選など上位入賞を果たす。東京・京都などでリサイタルを開催。
現在、ピアノを岡田博美・鶴見彩・黒木洋平の各氏に師事。
きちんと向き合いたかった音楽を、大学院ではじめて専門に
―大学を卒業し、社会人経験を経ての大学院ですよね。どういう基準で選ばれたのですか?
本荘悠亜:僕は一度、社会人生活を経てからの大学院なのですが、ピアノで修士をとりたいと思ってかなり調べました。海外も考えましたが、コロナ禍になったことも影響しましたね。結局国内に絞って片端から調べ、最もカリキュラムが充実していてハードだと思ったのが、今行っている桐朋学園大学院大学です。
―富山県にキャンパスがあるんですね
本荘悠亜:はい。それもここに決めた1つの理由です。都会にはないゆったりした練習室のつくりで、設備もすごく充実しています。学生数も多くないので、かなり潤沢な環境で練習できる。じっくり学びたい人に向いています。
―なるほど
本荘悠亜:院生同士の距離も近くて、一生付き合っていけるような同志に出会えたのがうれしいです。課題もいろいろと大変なのですが、自然とお互いに助け合っていますし。勉強している内容も楽しいし、ピアノを専門的に学ぶことが本当にやりたかったと思えているので、来て良かったと率直に思っています。
―技術的な面もここへ来て伸びた感覚でしょうか
本荘悠亜:そうですね。ずっとピアノは習ってきましたが、今が一番うまくなっていると感じています!
―学ぶ環境があっているんですね
本荘悠亜:総合的なことが影響しているとは思います。気力、体力、時間、そしてここまで積み上げてきたものが組み合わさったときに伸びるのかなと。
―ばらばらだったものが統合されていく感じでしょうか
本荘悠亜:音楽的なイメージだけがあっても実現しないし、技術だけがあっても駄目だし、精神性も、また理想を持つことも、すべて満たされていないとステップアップしていかないと思っています。
―なるほど
本荘悠亜:僕自身は10年以上スランプのような時期がかなり続いたので、うまくいっているかどうかが自覚できる方だと思います。20代半ばにもなるとすでに自身のスタイルを完成されている人もいるのですが、僕は根本的な部分から日々変わっているなと思っていて。
―円熟味を増していくような方とはまた別ですね
本荘悠亜:そうですね、基本的なスタイルを確立して、その枠の中でどれだけバリエーションを広げられるかという人もいますが、僕自身は専門的に始めたのが遅かったからこそ根本的な部分の試行錯誤ができるのが面白いと思っています。
曲に向き合うことが楽しい
―この3月に卒業されると思いますが、その後はどういう活動のイメージをされていらっしゃるのですか
本荘悠亜:大学院に入学した1番のきっかけというのが、前職で素晴らしいピアノ指導者の先生方に出会ったことなんです。自分に向いていることとして、演奏よりもレッスンでわかりやすく人に伝えて成長してもらうと言う指導なのではないかと思っています。
とはいえやってみないとわからないですね。熱しやすく冷めやすいという部分もあって。やってみて違うと思ったらまた変える。今は、演奏3割、指導7割ぐらいの目安でやれたらと思っています。
―もう具体的に決まっていらっしゃる活動があるのですか
本荘悠亜:楽器店で教えることが決まっているのですが、その他に自分の教室も立ち上げる予定です。オンラインを活用した従来とは違うレッスン形態を自分の事業として広げていくことも考えていますね。また、地元の滋賀県にて、調律師とコラボレーションした新しい形の音楽教室を企画しています。
―レッスン方法もいろんな進化ができますよね
本荘悠亜:来る方の個性に合わせて試していきたいとも思っています。練習をきちんと家でできる人はそれを前提に組み立てますが、家でできない人ならレッスン自体が練習の場となってもよいと思いますので。
―演奏会の予定はおありですか?
本荘悠亜:それはこれからですね。ただ、演奏の機会が多ければ多いほどよいかどうかは、人それぞれだと思うんです。毎日のように演奏会に出て、世界中を飛び回っている方がうれしいというタイプもいますが、僕はまた違っていて。毎月2回演奏会があるだけでも、結構エネルギーを使うなと思ってしまう人なんです。
―そうなんですね
本荘悠亜:聴いていただくことはうれしいのですが、やはりプレッシャーも感じるし、気恥ずかしさもあるので、根っからのプレイヤーではないかもしれません。
―弾くこと自体が好きで、必ずしも人前でなくてもよいと
本荘悠亜:自分のために弾いている部分も大きいですし、研究していく過程が楽しいというたちですね。結果はもちろん披露したいと思いますが。
―研究成果を発表しているような感覚に近いのかもしれませんね
本荘悠亜:そうですね。トークコンサートを大学院に入ってから始めたのですが、その方が実は落ち着くんです。曲についても話しますし、曲に関して思っていること、作曲家の話とか、結構フリーに話しています。
―トークがあるとより楽しめるなと感じます。たぶんサロンに音楽を聴きに来る人は、トークも楽しみたいという方が多いのではないでしょうか
本荘悠亜:8月に行ったリサイタルは40席だったので、かなり親密な空間でできました。一方で10月には2,000席を前にオーケストラと一緒にやったのですが、また全然違いましたね。個人的にはサロン型の方が好きですし、向いているかもしれません。
―他の楽器との合奏など、ピアノソロ以外のリサイタルもなされるんでしょうか
本荘悠亜:今後はやっていきたいですね。師匠からも器楽とのアンサンブルが向いているのではと言われたんですよね。
音楽を仕事にするという夢が間近に
―ご自身の活動を発信するということはいかがでしょうか
本荘悠亜:発信はどんどんしていこうと思っています。目立つ経歴があるわけではないので、聴きに来てくださる方に向けても、あるいは一緒に企画を考えている人を募るにも、発信力が大事だと思っています。
―演奏できる場も1つの発信でしょうか
本荘悠亜:コンサートにおいては、その場かぎりでなくて、今後ファンになってくださる方のために発信する意味はとても大きいと感じます。ただし収支はきちんと考えて取り組まないといけないと思っています。考えてやらないと、自分が大変になるだけですので。
―収支面の難しさは、業界全体に通じる問題かもしれないですね
本荘悠亜:8月のリサイタルの時には「若手応援プラン」というものを使って、経費を押さえた企画ができたのですが、使わなかったら成り立たなかったかもしれません。
―広告活用など他業界でやっていることも、発想として取り入れられるかもしれないと思います
本荘悠亜:確かに、発想豊かに考えていくのが大事で。演奏するところだけではなくて、演奏会全体をちゃんと考えて企画するというのが、これからもっと必要だと思っています。
―幅広く考えるべきことがあると
本荘悠亜:とはいえ、今はせっかくの学生でいられる時間を充実させているところです。仕事という点では柔軟に考え、まずはやりたい活動をいいペースでやれるようにしていこうと思っています。
―一緒に演奏会をされる方はいらっしゃるのですか?
本荘悠亜:今は固定で組んでいるような方はいないんです。これから出会いがあるかもしれませんし、まずはいろいろなご縁を大事にしながら、幅広くやってみようと思っています。
―あまりこだわらずにということですね
本荘悠亜:その時一番盤石なものをやっているつもりでも、いつしか気持ちは変わったりしますからね。飽き性なのかもしれませんが、ピアノに対しては27年間飽きていないので、これは大丈夫だと思っています!
―先を決めすぎていないからこそ、楽しみですね
本荘悠亜:音楽を仕事にするというのは悲願というか、自分にはできないと思っていた夢でもあるんです。この道でどこまでいけるかは、自分でも楽しみです。
―ありがとうございました