音に駆ける×吉岡克倫(サックス奏者)| 理想の音を求めて
「音に駆ける」をテーマに、クラシック奏者へ過去・現在・未来をお聞きする記事企画。第4弾は2月(高知市)、3月(大阪市)にてリサイタルを控えている吉岡克倫さん。 プレイヤーとして活躍されるなかで、年明けのリサイタルに向けての心境をお聞きしました。
吉岡克倫(Twitter Instagram Facebook blog )
大阪府門真市出身、東京都国立市在住。
2013年東海大学付属仰星中・高等学校を卒業。
高知や大阪で定期的にコンサートを開催
―2月に高知市、3月に大阪市でコンサートを開催されますよね。まず高知市では「高知トリオ」のメンバーでなされるとのこと。どういう経緯で組んだ方々か教えていただけますか。
吉岡克倫:
もともとは4人でサクソフォンカルテットを組んでいたんです。高知から2人、関西から2人。関西と高知を結ぶようなプロジェクトにしたいという話で始まった活動だったのですが、メンバーそれぞれの事情で形が変わっていきまして。
―そういうスタートだったんですね!
吉岡克倫:
1人は別の活動をするということで抜けて、もう1人はサクソフォンからピアノ演奏に移行して、結果的にピアノとサクソフォンの室内楽トリオになっていきました。
―定期的に演奏会をしてきたのですか?
吉岡克倫:
そうですね。年に1回定期公演をやってきて、今年が4回目です。
―場所も同じところで?
吉岡克倫:
はい。高知の繁華街にある建物を使っています。カフェやシアタールームが下階にあっていい雰囲気なんですよね。
―大阪でもコンサートをされるんですね
吉岡克倫:
大阪は地元なんです。きっかけは後輩のトランペット奏者と意気投合して「一緒にやりましょう」という話でした。トランペットとサクソフォンとピアノという組み合わせは、珍しいんです。楽曲も少ない ですし。だからこそ、オリジナルのトリオ編成を探求していこうというのもありました。これを機に、以降は毎回 いろんな楽器とアンサンブルしています。
―そうなんですか!
吉岡克倫:
作曲家の寺田大紀くんという同級生がいるのですが、彼と2人で企画しています。既存曲から寺田くんの作曲した曲まで、いろいろと演奏しています。
隠れた名曲を探して、積極的に演奏する
―ちなみに「東京トリオ」というのもやっていらっしゃるんですか?
吉岡克倫:
やっています。直近の本番では 日本人作曲家による既存曲を中心に行いました。誰かの演奏会のためにつくられた曲って、実はたくさんあるんですよね。ただ、その後演奏される機会がなかなかないと。
―そういう曲は譜面になっているのですか?
吉岡克倫:
なっています。出版されている曲もありますし、作曲者に言って直接購入できるものもあります。
―「高知トリオ」と「大阪トリオ」の選曲コンセプトは違うわけですか?
吉岡克倫:
違うんです。高知はリーダーの竹本さんが学校での指導をしている縁で、学生さんが結構来てくれます。何か学生さんに役立つ形にできないかと思って、プログラムの第一 部を西洋音楽史の流れに組み込むようにしたんです。
―おもしろいですね
吉岡克倫:
第1回目は、サクソフォントリオでのコンサートでしたが 、第2回目にバロック時代の音楽を、第3回に古典派 ……そして今、前期ロマン派のところまで進んで来ました。演奏の合間のMCで時代と曲調の解説なんかも挟みながら、行っています。第2部はメンバーのソロやアレンジコーナーをやったりして、楽しんでもらえる形にしました。
―大阪の選曲コンセプトはいかがでしょう?
吉岡克倫:
あまり演奏されていない曲をどんどんやっていこうというコンセプトです。今年度は完全初演が2曲、関西圏で初めて演奏するような曲が4〜5曲という構成です。ただ必ず1曲は伝統的な楽曲を入れるようにしていますね。
サクソフォンは音色の豊かさが、大きな魅力
―サクソフォンに出会ったのはいつですか?
吉岡克倫:
中学で吹奏楽部に入ったときです。といっても、実はたまたま勧められたのがきっかけだったんです。当時、映画「スイングガールズ」が流行っていて、そこで使われているのがテナーサクソフォンだよと先輩に言われたんですね。希望者の選考があって、たまたま通ってしまった……。
―偶然の出会いとも言えるわけですか
吉岡克倫:
もともと、4歳からピアノをやっていました。ピアノはメロディーを奏でることが中心ですが、クラシック音楽でのテナーサクソフォンでは、基本メロディーではないんです。しまったと思ったのですが、選考があった手前嫌とは言えない(笑)。ただ、すぐコンクールも始まるし……ということでとりあえず吹きはじめました。
―確かに、クラシック音楽の中だと主旋律は別の楽器が奏でることが多いですよね
吉岡克倫:
中高一貫の学校に通っていたので全体でも合奏をしていたのですが、たまに中学生だけの本番になると、少人数編成なんです。だから、アンサンブルコンテストをやるためにバリトンサクソフォンが欲しいとなったらその助っ人に行くし、高校生と吹くときは テナーサクソフォンを吹くし、高校生になってからはコントラバスクラリネットまで、いろいろ担当していました。
―適用能力が高いというか、変化にちゃんとついていけるんでしょうね
吉岡克倫:
教えてくれる人が良かったんでしょうね。いろいろ吹けたのは良かったと思っています。
―どういうところがサクソフォンの魅力でしょう?
吉岡克倫:
個人的には、倍音が豊かで広がりがあるところが好きですね。柔軟性がある楽器だとも思っています。
―普段の練習はどんな感じですか?
吉岡克倫:
日中は別の仕事もしているので、夕方から夜にかけて、休憩を挟みつつですね。僕は基礎練習が好きなんです。ずっとそればかりやっていてもいいくらいなんですが、本番が近ければ曲の練習もします。
―吉岡さんにとって、リサイタル・コンサートというのはどういう場ですか?
吉岡克倫:
リサイタルというのは研究成果というか、それまでに培ってきたもの、聴いて欲しいものを吹く場。ですので、あまりお客さん視点ではないんです。自分はこれを学んできたというのを発表する場ですので、MCもなくとにかく吹き続ける。
一方で、コンサートはMCもフルに入れて、楽しめる場を意識します。そこははっきり分けています。エンターテイメントに近い意識が働いています。
3年ぶりのコンサートに、想いを込める
―この先の活動プランなどはありますか?
吉岡克倫:
まず高知は、音楽文化を発展させようというのがスタートだったので、そこをもっと貫いていきたいですね。どうしても集客が東京に比べて大変なので、きちんと見極めつつ、内容をいいものにしていきたいなと思います。
―なるほど。地方は競合が少ないともいえますが、反面聴者自体が少ないという面もありますよね。
吉岡克倫:
大阪については、できるだけいろいろな楽器の組み合わせでやりたいです。ただ、大阪での演奏会はある程度期間を区切って考えています。いずれはこの企画を東京でやるようにしていきたいなと。東京での活動は継続しつつ、リサイタルも年1回はやれたらと思っています。
―何本も企画を並行して進められるものなんですか?
吉岡克倫:
んーー。プログラムによりますね。曲が重なれば並行しやすいですし、まるきり違うと大変です。
―隠れた名曲を見つけ出すのもすごいなと思うのですが
吉岡克倫:
そこはCD や文献をあさって探しています。たとえばクラシックサクソフォンの父とも言われるマルセル・ミュールという人がいるのですが、彼のためにかかれた作品はすごく多い。でも今演奏されている作品はごくわずかです。最近の技術で昔の作品やCDがたくさん出版されるようになったので、よく発掘しに出掛けています。
―どこでそのCDを?
吉岡克倫:
某ディスクユニオンです(笑)! あと、よく来てくれるお客様から教えてもらうこともあります。他にも 例えば東京文化会館のホームページから昔のコンサートの一覧を眺めて、こんな楽曲もあるんだと知ることもありますね。YouTubeの関連動画からもあさりますし、とにかく知らない曲を探し回っています。
―ちなみに一番好きな楽曲は何ですか?
吉岡克倫:
P-P.ボーザン の「ポエム」という曲です。サクソフォンには珍しく指をたくさん動かすことが必要なくて、美しく奏でることが出来るポイントが押さえされています。サクソフォンは、そんなに指回しも必要ないし、特殊 奏法も不要とまでは言いませんが、いわゆる現代音楽以外は少しでも十分なはずです。
でも一貫してロマンチックな楽曲がないなと思っていたときに、この曲を聴いて。「これが自分の求めていた音楽だ!」と感じたんです。
―そういう話を聞けるのもまた楽しいですね。最後に、高知と大阪で予定しているコンサートについてご紹介ください!
吉岡克倫:
両方とも2019年以来の3年ぶりです。特に高知はコロナ禍で何度も延期を重ねてきたのがようやくフルでできる 状態になりましたからね。なので全員思い 入れをもって準備をしています。
そして大阪は、初演のような曲たちばかりを集めたので、フレッシュなメンバーと、お祭りのような時間になると思います!どちらもいい音楽をお届けしますので、ぜひお越しください!
―ありがとうございました。
聞き手:有限会社ルミアデスソリューション
動画撮影・編集:タグボート合同会社